税務訴訟 [Round.9 : その後の事態の推移]
 

紛争再燃 (2001/5/8)

転居して、管轄の税務署が王子署に変わったわけだが、ウソツキ武蔵府中税務署から申し送りがあったそうで、今頃になってようやく、「王子税務署・特別管理部門の吉田」と名乗る人物から、拙宅に電話がかかってきた。
(5 月に気合を入れて調査したところで人事考課に影響しないだろうに、御苦労様)

話の内容は毎度恒例で新味もなかったので、

  • 最高裁判決 (昭和 56 年 4 月 24 日民集 35 巻 3 号 6782 頁) に示された "給与" の解釈との矛盾
  • 労働省 労働基準局長通達 (平成 9 年 6 月 1 日基発 412 号) との矛盾
  • 課税に際しての法的根拠の不備
  • 租税法律主義との乖離
  • 「権利行使によって労働の対価を得た」とみなすというが、いつからいつまでの労働に対する対価とみなすのか説明せよ、と突っ込んだ

など、次々に弱みや矛盾点を突いて攻め立てたところ、敵はタジタジ。せいぜい「根拠を出せ」というのが関の山。(それぞれの根拠は、このサイトやリンク先の各サイトにおいて、全世界に向けて公開中である)

あげく、労働基準局長通達の件にいたっては「その話は知らない」というから、「こと労働と給与に関わる問題なのに、国税庁は労働省に確認もせずに決めたのか。霞ヶ関のヒエラルキーでは、国税庁は労働省よりも偉いのか」と追及したら、「とにかく知らないんだ」の一点張り。やれやれ。

面白かったのは、修正申告にせよ更正にせよ、「加算税は課しません。給与所得として計算された税額との差額だけを納税していただきます」といったこと。

こちら にもあるし、自分であちこちに取材して回った結果もそうなのだが、人によって、処分の内容や当局の対応振りが、実にバラバラなのだ。人によっては加算税を食らった人もいるのだが、たまたま、うちの場合はこういうクジを引いたらしい。
拙宅に電話してきた人間は「対応がバラバラだなんて、そんなことはない」というのだが、現にバラバラな事実があるのだからどうしようもない。

なんにしても、今のところ証拠となりそうな書類は出てきていないので、「そういうものがあったかどうか定かでないし、見つかるという保証はできない。もし見つからなければ、そっちで頑張って何とかしてくれ」と申し渡しておいた。当局が自分で調べる羽目になったときに、どれだけマトモな証拠を並べられるか、要チェック。
ついでに、武蔵府中税務署のウソツキぶりについても当てこすっておいたので、何かリアクションがあるかどうか、こちらも要チェック。

傑作だったのは、度重なる修正申告の慫慂をことごとく突っぱねたところ、「困りますねぇ〜」を連発したこと。そりゃまあ、修正申告が取れなくて更正にしてしまうと、担当者の人事考課にも響くのだろう。第一、更正には「理由」を書かなければいけないが、本件には「理由」となるべき法的根拠がない。それは確かに困るだろう (爆笑)。
だが、どうして我々納税者が、筋の通らない修正申告に応じて余分な税金を取られてまで、税務署員の人事や御都合に気を使わなければいけないのか。笑わせないでいただきたい。

あと、しきりに「早くケリをつけたい」といっていたのも興味深い。人事考課に響く期限でもあるのか (これは考えにくい。3 月までの増差所得獲得成績などで決まるらしいから)、はたまた署長か局長あたりにどやされているのか。


奇怪なる当局の対応ぶり (2001/5/16)

最近入った情報によると、拙宅に電話してきた王子署の吉田氏が「延滞税・過少申告加算税は課さない」と発言したのは、今年の国税庁の方針なのだそうだ。ある人が当局の慫慂に応じて修正申告したところ、同じ趣旨の説明があり、差額分の納税だけで済まされたのだそうだ。

さらに、鳥飼総合法律事務所の Web サイトによると、現在、東京地裁で訴訟を提起中の 10 人の原告に対しても、過去の H9・H10 年度の所得申告に関わる更正処分の際に課せられた延滞税と過少申告加算税が、課税庁自らの手によって取り消されたとのこと。

さあ、これはいったい何を意味するのか。

拙宅に電話してきたときの一件が税務署長レベルの裁量で決まったのだとすれば、これは「修正申告に応じさせるための "餌" として、延滞税と過少申告加算税を課さないことにした」という推測も成り立つ。そして、このように当局者の裁量でペナルティを課すかどうかまでも決められるということが、そもそも根本的な問題なのである。

しかし、井上個人のレベルにとどまらず、それがあちこちに広まっているとなると、国税局、あるいは国税庁レベルの組織的な動きということになる。

まあ、署長レベルだろうが国税庁レベルだろうが、当事者の裁量でこういう重大なことを左右できるという現状に問題がある、という事実に変わりはない。
たとえば、スピード違反の取り締まりのときに、担当の警察官が「まあ、ここは大目に見て、罰金を半額にまけておいてやろう」なんていうことを日常的にやっていたらタダゴトでは済まない。それと同じことがまかり通っているのが、税務署という組織の不可解なるところだ。

これもまた、当局がお得意とする "密かなる変節" だが、どういう背景からこうした動きが生じたのか、注意してウォッチする必要がありそうだ。


続・奇怪なる当局の対応振り (2001/6/18)

↑の件だが、「当局が "一時所得と誤指導した" ということで、意図的な脱税ではないとして処分を取り消したのではないか」という解説が、鳥飼総合法律事務所のサイトに掲載されている。なるほど、ありそうな話だ。しかしである。

そもそも、当初の当局の主張は「最初から給与所得として指導していた」というものであり、去年の 8 月に MSKK の一件をマスコミにリークしたときにも、「最初から給与所得にするよう指導していたにもかかわらず、一時所得で申告した」といわんばかりの内容であった。

ということは、今頃になって「誤指導」の存在を認めたかのごとき行動に出たというのは、当局の主張の一端が破綻したということに他ならない。もっとも、当局が実際に鳥飼事務所の解説どおりの内容を発表したわけではないから、これはあくまで推測だが、どっちにしても明確に見解を表明しないあたり、責任逃れを得意とする日本のお役人の体質が垣間見える。

また、今頃になって MSKK 元常務の脱税事件について (これは告発までしたというから、ホンモノの脱税かもしれない) マスコミに情報を流したというのも、旗色の悪さを自覚して、なんとか自分達の主張を正当化しようとしての、得意のリーク戦術と見られる。

だが、脱税と所得区分の解釈の問題は、そもそも別の話である。そこのところを勘違いしてはいけない。

ホンモノの脱税なら、告発して処分すればよろしい。それは当然のことだ。
ただし、そのことを利用して、MSKK の関係者すべてが意図的に税金を免れようとしていたという印象を世間一般に与えんとする、いわゆる世論操作を行おうとしているのだとすれば、それは承服しがたい。その一点だけ、念を押しておきたいと思う。

また、今回の「脱税告発」を、読売新聞だけが大きく扱っている点にも注目したい。聞くところによると、国税当局はマスコミ各社に対して次々に税務調査に入っているそうだが、特に読売が多額の追徴を食らったという話がある。その「弱み」を利用して、読売を使って「御用報道」をやらせた可能性がまったくないと、果たしていい切れるものだろうか ?


第 2 ラウンドの開幕 (2001/6/29)

7 月の人事異動を控えているのと関係があるのか、はたまた上司に尻を叩かれたのか、2 ヶ月近いブランクを挟み、王子税務署・特別管理部門の吉田氏が「早く資料を出せ」と督促電話をかけてきた。1 週間以内に何とかしろ、という期限付きだ。

(どうでもいいことだが、この「特別管理部門」という名称は、納税者を威圧しようという意図がミエミエである。お年を召した方なら、「特高警察」あたりを連想するのではなかろうか :-)

そんなこといったって、ないものはないのだ。せいぜい、反面調査でもタンメン調査でもチャーシューメン調査でも、好きなようにやっていただきたい。邪魔するつもりはないから。

気のせいか、前回と比べると、あちらさんの腰が低いような気がした。
きっと、気のせいに違いない。世界に冠たる優秀な日本の税務署員ともあろうものが、腰を低くしてやってくるハズがない。


「検討します」ときた (2001/7/9)

例の吉田氏から電話がかかってきた。資料の督促だ。でもって、概略、以下のような内容のやり取りが。

吉>
この前お願いしていた資料の件ですけど、どうでした ?
井>
見つからないですねえ。まあ、忙しい仕事の合間を縫って探してみましたけど。まさか、(申告書に書いた) 金額まで疑ってるんじゃないでしょうね。
吉>
いや、疑ってるとかそういうんじゃなくて…
井>
だいたい、銀行から数字をもらって KSK に入れてあるんだろうから、最終的な数字の裏ぐらいは取れるでしょ。
吉>
いや、それはその…

KSK とは「国税総合管理システム」のこと国家権力にモノをいわせて金融機関などから集めた、納税者の資産などに関するデータが大量にぶち込まれている。朝霞にあるコンピュータ・センターが総本山らしい。
ちなみに、税務署員が銀行に出かけていって、納税者に関する資料を出させて調べることもある。また、本来のターゲットである資料以外の部分にチラチラと横目を走らせる「横目調査」という言葉もある。

井>
なんにしても、それらしい資料は出てきてない、ってことです。一年前から同じ押し問答の繰り返しですけどね。
吉>
この前のお話では、資料があるかもしれないという話だったんですけど…
井>
それはそっちが勝手に「解釈」したんで、possibility として完全否定はできないけど、ということです。「ある」と明言はしていない。
吉>
それでは、またどうするか検討した上で、後日連絡します。

あちらさんの口ぶりだと、拙宅に「資料が実は存在する」という可能性に賭けていたような気がする。外れることもあるから賭けというのだ。

ともあれ、これで当局は「反面調査」のために、ひょっとするとアメリカまで遠征しなければならない可能性が出てきたわけだ。少なくとも、レドモンドの MS 大本営に行けば権利付与についてはデータが残ってる可能性があるが、果たして、そこまでやる根性があるのだろうか ? アメリカまで海外遠征調査をやって見せてくれれば、それはそれで誉めて差し上げるのだが。
ともあれ、わざわざ手間暇かけて調査して更正処分を出すと、結果として自分達の上司 (署長) が税務訴訟を起こされて被告人席に座らされるわけだ。上司を被告人席に座らせるために働かなければならないとは、素晴らしきかな人生。


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