税務訴訟 [Round.10 : レジスタンスの薦め]
 

ここではちょっと視点を変えて、税務署員の慫慂に応じて、修正申告 (した | させられた) 人や、これから税務署とバトルしようとしている人のために、役に立ちそうな情報をまとめておこうと思う。


記録の薦め

とにかく、最初の電話からこちら、税務署員が何をいったか、何を書いてきたかは、全部記録を残そう。もちろん、電話や口頭でやりあう場合は、それを録音しておこう。もし、向こうが口頭で済ませようとしたら、全部を書面で寄越すように要求しよう。

私の場合、最初の電話の「更正します」発言を記録しておけなかったのが最大の痛恨事だが、かように、証拠がなければ「そんなことはいっていない」とトボけられる。証拠を突きつけられれば、そんな真似はできない。

最近、税務署に行くと、税務署長の名前で「カメラ・録音機持ち込み禁止」という爆笑モノの張り紙が出ているようだが、なに、どうせ法的根拠などありはしない。持ち込んだのがバレたからといって警察に突き出される訳でもなかろう。

もっとも、腕っ節の強そうな税務署員に囲まれてフクロにされるぐらいのイベントは発生するかもしれないから、録音機の持ち込みはバレないように注意する必要がある。ありがたいことに、最近では小型の IC レコーダーが安く出回っているから、これがもっとも使いやすいと思う。
それに、IC レコーダーならデータを PC で二次利用するのも楽だ。WMA 形式にしてストリーミング再生するのも、また一興♪

なお、隠し持つ方法は季節や着ているものにも依存するので、各自の判断に任せたい。一人で出向かずに、税理士、あるいは弁護士同伴で乗り込むというのもひとつの手だと思う。

もし、税務署員の方から自宅に乗り込んできてくれれば、こっちのものだ。税務署の敷地外まで署長の御威光は及ばないから、「録音機持ち込み禁止令」だって有効範囲外。といっても、密かに録音すべし、という原則は同じこと。わざわざ相手を警戒させることはない。


誘導尋問に注意

私の場合はそれほどでもなかったが、一般的に税務調査に関してよく聞く手口がこれ。
たとえば、こんな話がある。

旅行の費用のことで、税務署員に「旅行は仕事ですか、プライベートですか」と聞かれて、「そんなの取材ですよ」と答えたところ、「楽しかったですか」と聞かれ、「いや、なかなか楽しかったですよ」と口にした。その途端に「じゃあ、遊びですね」と決めつけられたのだそうだ。

基本的に、調査中の事柄と関係ない、一見「単なる雑談」風の話を先方から振ってきたら、要注意である。往々にして、納税者をドボンするための伏線となる、誘導尋問だったりするのだ。世界に冠たる優秀な日本のお役人は、決して「雑談」で税務調査の時間を浪費することはないと思うべし。
基本原則としては「聞かれたことにしか答えない」「最低限のことしか答えない」ということだ。まずはこれを徹底しよう。

ときには、いうに事欠いて「いいですねー、こんなに株をもらえて」などとぬかす税務署員もいるそうだが、そんな台詞は自分達のやっていることを正当化させるためのエクスキューズでしかない。第一、「解釈を変えるだけで売り上げが増やせて」「23 年勤めれば資格が自動的に降って来る」ような、すこぶるお目出度い連中にいわれる筋合いじゃない。
くれぐれも、こんなおだてに乗せられないように。


更正されると何か不利があるのか

通常の税務調査では、「修正申告しない」と突っぱねた場合、金額を減らしてでも修正申告させようとすることがある。
これは無理もない話で、修正申告させてしまえば不服申し立てへの道が閉ざされるから、税務署員としては修正申告させたい。それに、修正申告させて増差所得を稼がないと成績にならない。そのため、脅したり宥めたり額を減らしたりして、修正申告を迫ってくることも多いだろう。

もっとも、ストックオプション課税が問題になるのは会社員で、会社員の場合は白色申告だから、修正申告を突っぱねれば敵は推計課税して (といっても、おそらくは「一時所得」の金額を「給与所得」の欄に転記して計算し直しただけだろうが…)、更正してくる。

本来、修正申告でも更正でも、追徴税額に差はないし、そんなことはあってはならない。なぜなら、問題になっている所得の内容が変わるわけではないのだ。もし、税額を減らして修正申告させようとしたら、それは変だ。修正申告させるために、裁量で税金をまけてやっているということになる。

だから、更正されたからといって金額面での不利はないので、「給与所得」だというのが納得できなければ、まず「一時所得」で出す。もちろん、後で電話がかかってくるから、追徴を迫ってきたら修正申告を突っぱねて、更正させて不服申し立てを出す。
もちろん、給与所得として納税する場合を想定して資金を確保しておかなければならないが、後で取り返せる可能性を残すという点では、これがベストな道だと思う。

もっとも、会社が「国税に睨まれたくないから大人しくしてくれ」といってきた場合は、それに従わざるを得ないかもしれない。それは会社員としての立場というものもあるから、訴訟戦術を強要はできない。

だが、「面倒なことは嫌い」「早く楽になりたい」といって修正申告に応じてしまうのは、税務署員に出世のネタを与えて喜ばせ、かつ自らは不服申し立ての機会を閉ざされるという、二重に面白くない結論に至ることを忘れてはいけない。

貴方は、自腹を切って税務署員の出世に手を貸したいか ?
そうやって出世した税務署員が、顧問先を斡旋してもらって判子を押すだけの顧問税理士になるのを見て嬉しいか ?


もし修正に応じ (させられ) てしまったら…

税務署員の脅し、あるいは甘言にのせられて修正申告に一度は応じてしまっても、翌年 3 月 15 日までに「更正の請求」を出すという手もあるので、諦めるのはまだ早い。ただし、この期限の短さには注意が必要だ。

ちなみに、「更正の請求」というのは、一般的には「前年に税金を多く納めすぎたので減額更正請求を」という使い方をするもの。でも、実は「修正申告に対する更正の請求」というのもあって、意味としては同じになる。
(修正申告は、出した当日のうちでないと取り消せないそうだ)

それにしても、税務署の側から遡及できるのは「過去 3 年分」なのに、納税者が遡及できるのは「過去 1 年分」というあたりに、なんとも割り切れないものが残る。

しかし、一度は修正申告に応じてしまっても、かろうじて対抗手段があるわけだから、「しまった !」と思っている貴方は、ただちに更正の請求を出そう。前年の分までしか対象にできないが、何もしないよりマシだ。


脅しといえば…

脅しの手口にもいろいろあるが、極めつけは、いきなり「いついつまでに納税しないと差し押さえ」という通知を送って寄越す手口だと思う。

税務署から「差し押さえ」なんて通知が来れば、たいていの小市民はビビる。「税務調査」というだけでもビビるのに、「差し押さえ」なんていきなり来られたら、ビビるに決まっている。かくして、小市民は税務署のいいなりとなる。

本当に納税資金がない、というなら別だが、そうでなければ、何もビビることはない。もっとも、敵はこちらの資産状況を承知しているから、納税資金を持っている (はずの) 相手に対して、「差し押さえ」なんて通知は寄越さないかもしれない。
実際、私の場合、そんな馬鹿げた通知は来なかった。

なぜ、資産状況を把握できるのか。
不動産については資産税部門に訊けば判るし、現金資産は銀行に行けばデータを出してくれる。銀行だって税務署ともめたくないから、ほいほいデータを出す。勤務先だって、税務調査でいじめられたくないから、社員の権利行使のデータを出せといわれれば出さざるを得ないだろう。

そんな訳で、我々の資産状況は税務署には筒抜けなのである。それが嫌なら、スイスの銀行にでも資産を移しておこう。ただし、ストックオプションの場合は権利行使のデータを会社が国税に渡している可能性が高いので、悪いことは考えないように。


もし海外転勤のチャンスがあったら

外資系企業の日本法人なら、仕事の成績次第では、海外本社で仕事をしないか、と誘われることもあるかもしれない。そうなれば、好都合これ絶好機。すぐ、税理士に相談しよう。

株価が下がりまくっていれば別だが、権利行使して利益が出るストックオプションが手元にあるなら、日本ではなく海外本社に行ってから向こうで権利行使して、アメリカなりなんなり、現地の国で税金を払う。そして、現地で納税まで済ませてしまってから日本に戻る。これだ。

ただし、日本を出入りするタイミングや転勤の期間によって、税金がかかるかどうかには違いが生じる。
まず、これが成立するには「非居住者」にならなければならない。「非居住者」の場合、転勤前に日本国内で得た所得だけに課税される。転勤後の所得は現地で課税され、日本では課税対象にならない。

海外勤務期間が最初から 1 年未満の予定になっていた場合は、「非居住者」にはなれない。少なくとも 1 年間は海外で働く必要があるわけだ。
だから、転勤と権利行使のタイミング、それと株価という条件を揃えるのは結構大変かもしれない。だが、「日本政府が税金を理不尽に搾り取ろうというなら、日本政府にはまったく払ってやらない」というのも、ひとつの考え方だと思う。

それに、この方法なら脱税にはならない。日本ではなくて転勤先で、ちゃんと税金は払うのだ。
いくらアメリカの税金が高くても、日本のように半分持っていかれるということはあるまい。もっとも、特にアメリカで働くというのは、それはそれでハードなことではあるけど…

というわけで、私はアメリカに転勤した知人に触れて回っている。「そっちでありったけ権利行使して、合衆国に税金を払ってから日本に戻っておいで」と。


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