税務訴訟 [Round.15 : 名無し税務署員による却下通知 (I)]
 

「名無し氏」の登場

アルファ>で、予定通り、異議申立が却下されたそうで。

ブラヴォー>そう。予定通りね (笑)。4/8 に提出したから、回答期限は 3 ヵ月後の 7/7 なんだけど、この日は日曜日。だから、その前の金曜日に当たる 7/5 が、実質的な期限だったわけ。

アルファ>で、ギリギリまで引き延ばして持ってきたと。

ブラヴォー>引き延ばせば、こっちが根負けするとでも思ったのかねー。こっちは「ライフワーク」のつもりでやってるのに。

アルファ>ああ、あの頭を叩いて病気を治してもらう奴。

ブラヴォー>それは「ライフスペース」だっちゅうに。
それよりなにより、異議申立の却下ね。

アルファ>そうそう。ところで、タイトルの「名無し氏」って何よ。その税務署の人、2 ちゃんねらーなの ?

ブラヴォー>2 ちゃんねらーかどうかは知らないけど、名乗らないんだもの。「王子税務署ですが」といっただけで。名乗らないのに、名前で書けないよ。

アルファ>普通、自分が何者か名乗らない ?

ブラヴォー>そう思うけど、ここで名前を出されるのが嫌だったのかもね。
で、「何を持ってきたんだ。どうせ却下の書類だろう」っていったら、何かモゴモゴといい淀んでんの。

アルファ>自分が何を持ってきたか、分かってないのかね。

ブラヴォー>そんなの知らないよ。で、さらに「いえないようなものを持ってきたのか」って問い詰めたら「異議決定の謄本を持ってきました。ついては、受け取り (の捺印 ?) をもらいたい」っていうわけ。

アルファ>「受け取り」?

ブラヴォー>前に、更正処分の通知をもらってるけど、そのときだって「受け取り」なんて要求されてないんだよね。しかも、あのときは封もしてない封筒が、ポストに突っ込んであった。まあ、あの日は徹夜仕事で疲れ果てて、寝てたんだけど。

アルファ>なのに、今回に限っては「受け取り」を欲しいと。

ブラヴォー>そう。それを聞いた途端に頭の中で警報が鳴り響いたよ。「これは絶対怪しい、何かある」って。

アルファ>そりゃそうだ。

ブラヴォー>だから、「今、取り込み中だから、ポストに突っ込んでおいてくれ」っていった。

アルファ>正しい判断やね。

ブラヴォー>後でポストから書類を取り出したら、今度はちゃんと封がしてあった。で、出てきた書類が 14 枚。

アルファ>ずいぶん多いじゃん。

ブラヴォー>でも、最初の 1 枚は送付書だし、内容は同じことを 3 回繰り返しているだけだから、実質的に 4 ページ強。

アルファ>紙の無駄遣いだなあ。

ブラヴォー>国民の血税で紙を無駄遣いする、地球に優しくない国税庁 (藁)

アルファ>で、その中身について、これから解説すると。

ブラヴォー>そーゆーこと。
まあ、事情はどうあれ、無理やりにでも理由をでっち上げて却下しないことには、今度は署長の地位が危ないからねえ。もし、異議を受け入れたりして局長殿の機嫌を損ねた日には、引退後に税理士になるつもりなら斡旋してもらえるはずの顧問先だって、怪しくなるかもしれないし (藁)


法的根拠って

アルファ>で、どういう内容だったわけ ?

ブラヴォー>「我々が調べた、マイクロソフトのストックオプション制度はこうだ」「そして、申立人の場合はこうだ」「申立人はこう主張しているが、それに対する却下の理由はこうだ」っていう三部構成で、基本的には、同じことを繰り返して書いてる。

アルファ>それだけ ?

ブラヴォー>ああ、まだあった。冒頭で「平成 11 年度分の処分に対する異議申立は不適法」だとさ。

アルファ>なんでよ。

ブラヴォー>減額更正だから。正確に説明すると、更正の際に、11 年度分として申告した中からかなりの分が 10 年度分に回されたのね。だから、10 年度分は激増して、11 年度分は激減した。

アルファ>ふーん。

ブラヴォー>ま、これはこっちのミステークやね。でも、却下されたところで損害はないし、署長ドノに突っ込むチャンスをくれてやったということで。わざわざボケてやったんだから、感謝状でも欲しいな。

アルファ>おいおい。で、10 年度分の却下の理由は ?

ブラヴォー>「所得税法第 28 条の『給与所得』に該当する。一方、所得税法第 34 条の『一時所得』には該当しない。だから却下」だって。

アルファ>つまり、所得税法第 28 条が法的根拠だと。

ブラヴォー>てことになるよね。でも、武蔵府中税務署の佐藤氏は「法的根拠はない」って明言してるんだよね。どっちが正しいんだか。
そういえば、「西岡訴訟」の席でも、最初は、法的根拠はない、っていってたような。

アルファ>最初は「法的根拠がない」はずだったものが、いつの間にか「法的根拠がある」ことになっていた。

ブラヴォー>やっぱり、「法的根拠がない」じゃ裁判で争えないと思ったんじゃない ? で、後知恵で、所得税法第 28 条を根拠としてデッチ上げた。

アルファ>やれやれ。で、どうして所得税法第 28 条に該当するということになったわけ ?

ブラヴォー>それは、これから説明するわ。


勤務に関係していれば、みんな給与 ?

アルファ>では、本日のハイライト。

ブラヴォー>そう。なんたって、却下の理由が凄いよ。まずは、次の文章を読んでみてよ。

(ロ) また、申立人は、本件ストックオプションの行使に係る所得が、市場株価に基づき算定されるものであり、その株価は企業の業績だけに左右されるわけではなく、所得の実現が偶発的であるとも主張されます。
 本件ストックオプションは、株価連動型のインセンティブ報酬であって、申立人が主張するとおり、その所得の実現が株式市場の動向を反映することは事実ですが、所得税法第 34 条第 1 項の規定により、労務その他の役務の対価としての性質を有するものが一時所得となることはありません。
 前期ニの (イ) に記載のとおり、本件ストックオプションは、申立人が日本マイクロソフト社の使用人としての地位に基づいて付与され、その後、一定期間、同社に対し継続的勤務を行ったことにより行使可能になったものですから、本件ストックオプションの行使に係る所得が労務の対価としての性質を有し一時所得には当たらないことは明らかです。したがって、申立人の主張には理由がありません。

アルファ>どういうこと ?

ブラヴォー>つまりね。市場価格がどう推移しようが関係なく、最初に従業員としての立場に付随して権利が付与されたんだから、それを行使して得られた利益は一時所得に該当しない (つまり給与所得だ) ってこと。

アルファ>でもさ。ストックオプションの権利行使でどれだけの利益が出るか、ってのは、株価の推移を無視しては考えられないじゃん。

ブラヴォー>それが世間の常識なんだけど、その点には 1 ビットも触れていない。
第一、option price (注 : 株式を購入できる価額のこと) よりも権利行使の際の株価の方が上がってなければ、ストックオプションって、ただの紙切れなんだよね。だから、数年前の株高の時に権利付与されたストックオプションなんて、今ではゴミ同然。
投資家が株を「買いたい」と思わなかったら株価は上がらないし、オプション行使による利益もない。これ、世間の常識。

アルファ>そりゃそうだ。

ブラヴォー>でも、ここに書いてあることを字義通り解釈するならば、株価がどう動くかは関係ないっていうのが、国税の主張なわけ。
てことは、権利を付与された後で「精勤した」という事実が残れば、株価低迷でストックオプションによる利益を得そこなった場合、「給与の不払い」が発生することになるよね。でも、そんなことにはまったく言及してないんだな。

アルファ>「株価上昇とは関係なく、権利付与が収入の原因だ」という国税の主張を敷衍すれば、そういうことになるね。

ブラヴォー>はっきりいっちゃえば、「株価の上昇によって差益を得た」という直接原因や経済的実質を意図的に無視して、「従業員としての立場に基づいて権利を付与された」という間接原因だけを強調してるってことなんだな。

アルファ>なるほど。

ブラヴォー>ストックオプションという制度について正しく理解していれば、「購入価額が一定の線で固定された」という部分は従業員としての立場によって得られたものだけど、その後の値上がりによって得られた利益は、キャピタルゲインだというのは自明の理。しかも、投資家のファンダメンタルズに依存して上下する株価は、偶発性の塊。これ、世間の常識。

アルファ>確かに。

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