税務訴訟 [Round.15 : 名無し税務署員による却下通知 (II)]
 

もし、国税の主張が正しければ…

ブラヴォー>で、国税が持ち出してきた主張を字義通り解釈すると、とんでもないことになるよ。

アルファ>どうして ?

ブラヴォー>だってさ。「収入が得られた直接原因とは関係なく、とにかく従業員として継続的な役務 (注 : この場合は労働のこと) を提供することと引き換えに得られた利益なら、それは給与所得だ」といってるわけじゃない。
てことは、会社や役所に勤めることで得られた利益は、これ、みんな給与所得だってことになるよ。あの文面は例外については何も言及してないんだから、一般論としていってるんだろうし。

アルファ>そりゃそうだ。

ブラヴォー>てことは。たとえば、退職金は会社に長期にわたって継続的な役務を提供した結果として得られた利得だから、当然、給与所得だね。

アルファ>今は「退職所得」ってことで優遇されてるじゃん。それは間違ってたのか。

ブラヴォー>まだあるよ。社員持株会で安く自社株を買って、後でそれを売って儲けた場合、購入価格と売却価格の差額は、全部給与所得。だって、「従業員として役務を提供するのと引き換えに、株式を安く買ってる」んだし、重要なのは「従業員としての地位に起因」するかどうかで、キャピタルゲインは関係ないそうだから。

アルファ>キャピタルゲイン課税じゃなかったのか !

ブラヴォー>社員食堂で、市価より安く昼飯を食ったら、それだって「勤務先に役務を提供するのと引き換えに得られた利益」だから、差額が給与所得。その会社に役務を提供していなければ、社員食堂で安く飯を食えないんだから。

アルファ>うわああああ。

ブラヴォー>社内の飲み物自動販売機がタダなら、市価との差額は給与所得 ! 缶コーヒー 1 本につき 120 円の給与所得 !

アルファ>ひえええええ !

ブラヴォー>社員割引で自社製品を安く買ったら、市価との差額は給与所得 !

アルファ>勘弁してくれえ…

ブラヴォー>会社の保養所を安価に利用したら、民間施設との料金差は給与所得 !

アルファ>そんなあ…

ブラヴォー>外務省の役人が競走馬やマンションを買うために機密費を横領したら、それだって給与所得 !

アルファ>そ、それはちょっと違うような気が… (汗)

ブラヴォー>税務署員が、23 年以上勤めて無試験で手に入れた税理士の資格を使って開業すれば、それで得られた収入だって給与所得 !

アルファ>それって、事業所得じゃないの ?

ブラヴォー>だってさ。直接原因としては事業所得だけど、間接原因としては、税務署に 23 年以上にわたる役務を提供した結果として得られた資格を使って商売するわけだから、給与所得だよ。国税の論法を敷衍すると、間接原因の方が優先されるんだし。

アルファ>そうかあ…

ブラヴォー>とまあ、そういうことを主張してるんだよね。これって実は、サラリーマン税制の根幹を揺るがしかねない主張だと思うよ。
本来、「所得区分」というものが決められているのは、所得の内容によって発生するまでの事情が違うのに一律課税というのは具合が悪いから、それに配慮しましょう、ってことじゃない。そこのところを、完全に取り違えてるんだね。


都合のいいことしか答えない

アルファ>でさ。異議申立のときに、A4 の用紙で 9 枚分、"論文" を書いて出したんじゃなかったっけ。

ブラヴォー>そうだよ。じゃあ、その時に書いた項目について、それぞれどういう反応があったか、確認しておこうか。

処分そのものに関する問題点 : 計算過程の不明瞭 ○ : 書類の末尾に、一応、計算書はあった。

処分そのものに関する問題点 : 「勤務成績」と「対価」の関連 ○ : 一応、書くには書いてあった。詳細は後で触れる。

処分そのものに関する問題点 : 「勤務期間」と「対価」の関係 × : 回答なし。

処分そのものに関する問題点 : 理由なき処分の無効性 △ : 「青色申告ではないから、書かなくても違法ではない」のだそうだ。却下する段になって A4×13 枚分もの長広舌をふるうなら、最初から書けばいいのに。

所得の性質に関する問題点 : 市場価格に依存する偶発性 (1) (2) × : 間接原因にしか言及していない。

所得の性質に関する問題点 : 権利行使は個人の自由意思に依存する × : 無回答。

所得の性質に関する問題点 : 継続性の欠如 × : 無回答。

所得の性質に関する問題点 : 保証されない利益 × : 無回答。

所得の性質に関する問題点 : 課税根拠に関する主張の二枚舌 × : 無回答。

憲法 84 条との関係 × : 無回答

まとめに代えて : "亡国税制" に対する憂慮 × : 無回答

ブラヴォー>とまあ、そんな訳で、全部で 11 項目あるうち、まったく無視したものが 8 項目、注釈付きが 1 項目、内容は支離滅裂だけれども、一応は回答を寄越したものが 2 項目。

アルファ>実質回答率は、30% にも満たなかったと。

ブラヴォー>しかも、「賃金に該当せず」の労働基準局長通達の件なんか、一顧だにしてないでやんの。国税庁は、労働省のことなんて屁とも思ってないんだな、きっと。

アルファ>まあ、それを出したら、論旨が破綻するからねえ…

ブラヴォー>そういうことだけどね。
ちなみに、勤務成績に関する対価性の件については、こういっている。

単に雇用契約に基づき労務の対価として支給される報酬というよりは広く、雇用又はこれに類する原因に基づいて、非独立的に提供される労務の対価として、他人から受ける報酬及び実質的にこれに準ずべき給付を言い、労務の提供が自己の計算と危険によらず他人の指揮監督ないし組織の支配に服してなされる場合にその対価として支給なされるものであると解されます。

ブラヴォー>つまり、対価性というのは字義通りではなく、拡大解釈するべし、ってことね。

アルファ>ふーん。その根拠になるような判例とか通達とか、何かあるの ?

ブラヴォー>書いてないから分からない。根拠として使えるものなら、どんどん書けばいいと思うんだけどね。それが、「理由付記」の件とも絡んでくるんだけど。

アルファ>で、「理由付記」の件についてはどうなの。さっきのリストでは「△」ってなってるけど。

ブラヴォー>それはね。

(1) 申立人の主張の (1) について
 更正処分に当たってその通知書に更正の理由を付記しなければならないのは、所得税法第 155 条《青色申告に係る更正》第 2 項の規定により、青色申告書に係る年分の事業所得等の金額の更正をする場合に限られているところ、申立人が提出した平成 10 年分の所得税の確定申告書は、青色申告書ではありません。
 したがって、申立人に対する更正通知書には更正の理由を付記しなかったとしても、何ら違法ではありません。

なんとも読みにくい文書だ

アルファ>確かに、青色申告書じゃないじゃん。

ブラヴォー>まあ、法的にはそうなんだけどね。でもさ。
自分達の主張が正しいと思うなら、それを書くことに、何の問題がある ? なにも、A4 で 100 枚以上書け、っていってるわけじゃない。自分達の主張が正々堂々たるモノで、課税根拠として一点の曇りもないものだと心底から信じているのなら、それを堂々と書いて、「どうだ参ったか」ってねじ伏せればいいじゃん。それを避けてるってことは…

アルファ>責任逃れだって ?

ブラヴォー>その可能性もある。迂闊に理由を明記して、それが元になって、後から上役に突っ込まれるような事態になるのが嫌だと。

アルファ>他に考えられるのは ?

ブラヴォー>もともと、日本の役人の一般的体質として、「国民は黙って俺達のいうことを聞いていればいいんだ。グチャグチャいうな」っていう思考回路が組み込まれているとか。これは、凄くありがちだね。

アルファ>いえてる…

ブラヴォー>この回答率の低さといい、同じ主張を壊れたレコードみたいに (古い…) 繰り返していることといい、都合のいいことしか答えない、という国税の体質が如実に出てるね。
まあ、こっちも意図的に、当局が答えられそうにない設問をいっぱい持ち出して地雷を埋めたんだけど、みごとにひっかかった。

アルファ>ぎゃはははは。

| 戻る | 続く |


| 「税務訴訟」に戻る |
| Round. 14 : 祭りだ ! 突撃だ ! | Round. 16 : 審査請求なのだ ! |

Contents
HOME
Works
Diary
PC Diary
Defence News
Opinion
Special
Hobby
Ski
About
Old contents

| 記事一覧に戻る |