税務訴訟 [Round.19 : コピペ裁決書の巻]
 

3 判断

(1) 本件更正処分について

イ 本件利益の所得区分について

(イ) 認定事実
当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

A 請求人は、米国マイクロソフト社の 1991 年ストック・オプション・プラン (以下「本件プラン」という。)に基づき、本件ストック・オプションの付与を受けている。本件プランの要旨は以下のとおりである。
(A) 本件プランの目的は、米国マイクロソフト社の役員及び従業員 (同社の子会社のそれらを含み、(以下「本件従業員等」という。)の財務上の利益と長期の株主価値を一致させることによる、[1] 実質的な責任のある地位に最もふさわしい人材の確保、[2] 当該人材に対する追加的インセンティブの供与、[3] 会社事業の成功の促進である (第 1 条)。
(B) 本件プランは、米国マイクロソフト社の取締役会が管理する。同取締役会は、[1] ストック・オプションの付与、[2] 行使価格の決定、[3] 被付与者、付与時期及び付与数の決定、[4] 付与された各ストック・オプションの修正・変更、[5] その他本件プランの管理に必要な一切の決定等の権限を有する。同取締役会の決議、決定及び解釈は最終のものであり、かつ、すべての被付与者その他本件プランに基づき付与されたストック・オプションの保有者はこれに拘束される (第 4 条)。
(C) ストック・オプションは、本件従業員等にのみ付与できる (第 5 条)。
(D)被付与者の本件従業員等としての地位が終了し.た場合においては、当該被付与者は、当該終了の日において行使可能なストック・オプションに限り行使できる。当該行使は、当該終了の日から 3 か月以内になされなければならない。同期間内に行使されない場合には、当該ストック・オプションは失効する (第 9 条)。
(E) ストック・オプションは、遺言による場合あるいは相続又は遺産分配に関する法令による場合を除き、譲渡、担保権設定その他いかなる方法による処分もすることができず、被付与者が生存中は当該被付与者のみが行使できる (第 10 条)。
(F)本件プランは、年次株主総会における米国マイクロソフト社の株主の承認を必要とする (第 17 条)。
B 請求人への本件ストック・オプションの付与については、それぞれ契約書 (以下「本件各付与契約書」という。)が存在し、そのうち 1993 (平成 5 ) 年 7 月 30 日付与に係る契約書には、要旨以下のとおりの記載がある。
なお、その他の契約書の内容も同旨である。
(A) 米国マイクロソフト社は、請求人に対し、対価として、1993 (平成 5) 年7月30日付で、同社の普通株式★削除★株を、1 株当たり★削除★米国ドルで購入するストック・オプションを付与する (第 1 条)。
(B) ストック・オプションに係る権利は、本契約書が対象とする株式 (以下「対象株式」という。) の 4 分の 1 については、1995 (平成 7) 年 1 月 30 日に行使可能となり、その後 6 か月ごとに対象株式の 8 分の 1 について行使可能となる。したがって、ストック・オプションに係る権利は、本付与日の後 54 か月でそのすべてが行使可能となる。ストック・オプションが行使可能となる日程は、各種休暇、フルタイム勤務からパートタイム勤務への変更、身体障害その他の勤務態様の変更によって影響を受ける (第 2 条)。
(C) ストック・オプションは、本付与日から 10 年で失効する (第 3 条)。
(D) 被付与者の本件従業員等としての地位が終了した場合においては、当該被付与者は、当該終了の日において行使可能なストック・オプションに限り行使できる。当該行使は、当該終了の日から 3 か月以内になされなければならない。同期間内に行使されない場合には、当該ストック・オプションは失効する (第 4 条)。
(E) ストック・オプションは、遺言による場合あるいは相続又は遺産分配に関する法令による場合を除き、譲渡、担保権設定その他いかなる方法による処分もすることができず、被付与者が生存中は当該被付与者のみが行使できる (第 9 条)。

(ロ)所得分類の意義について

所得税法は、所得をその源泉ないし性質によって 10 種類に分類しているが、これは、所得はその性質や発生の態様によって担税力が異なるという前提に立って、公平負担の観点から、各種の所得について、それぞれの担税力の相違に応じた計算方法を定め、また、それぞれの態様に応じた課税方法を定めたものと解される。したがって、所得分類に関する規定については、この立法趣旨に照らしその所得の経済的実質に即して解釈適用をするのが合理的解釈といえる。

(ハ)本件利益の給与所得の該当性について

A 所得税法第 28 条第 1 項に規定する「これらの性質を有する給与に係る所得」の解釈に当たっては、上記 (ロ) で述べたように、所得税法における所得分類の立法趣旨に照らし、その経済的実質に着目してこれを行う必要がある。

B 給与所得とは、一般に雇用契約又はこれに類する原因に基づき、使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付とされているが、その性質は、個人の非独立的ないし従属的な人的役務の提供の対価であると認められることから、使用人の地位又は職務に関連して受ける給付である限り、その給付の支払者は、必ずしも、労務の提供を受ける直接の使用者に限られないと解される。

C これを本件についてみると、上記 (イ) の A の本件プラン及ぴ上記 (イ) の B の本件各付与契約書の各規定のとおり、[1] 本件プランの目的として、人材の確保と当該人材に対する追加的インセンティブの供与が掲げられていること、[2] 本件ストック・オプションは、請求人が本件従業員等であることを前提に、対価として付与されたものであること、[3] その行使は、請求人の本件従業員等としての一定期聞の勤務をもって可能となること (本件従業員等としての地位が終了した場合は、当該終了の日において行使可能なストック・オプションに限り 3 か月以内は行使できる。)、[4] その譲渡等は原則として禁止されていることが認められる。

これらのことからすると、本件利益は、請求人が本件従業員等たる地位に基づき、米国マイクロソフト社の株式を購入することができる権利を同社から付与され、本件従業員等として一定期間勤務することにより、これを行使して得たものであるということができる。
換言すれぱ、本件利益は、請求人が、専ら、日本マイクロソフト社に勤務することに基づいて得られた経済的利益、すなわち、請求人の非独立的ないし従属的な人的役務の提供の対価としての性質をもった所得ということができるから、給与所得に該当すると解するのが相当である。

D 請求人は、上記 2 の (1) のイの (イ) 及ぴ (ロ) のとおり主張する。
しかしながら、上記 C で述べたとおり、本件利益は、請求人が本件従業員等たる地位に基づき、米国マイクロソフト社の株式を購入することができる権利を同社から付与され、本件従業員等として一定期間勤務することにより、これを行使して得たものであるから、請求人の非独立的ないし従属的な人的役務の提供の対価としての性質をもった所得と認められる。
したがって、この点に関する請求人の主張は採用できない。

E 請求人は、上記 2 の (1) のイの (二) のとおり主張する。
しかしながら、労働基準法と所得税法とは、法律制定の趣旨・目的などが全く異なるものであるから、所得税法の規定の解釈に当たり、労働基準法の規定の解釈に拘束を受けるものではないことは明らかである。
したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

(二) 本件利益の一時所得の非該当性について

A 一時所得については、所得税法第 22 条《課税標準》第 2 項第 2 号の規定により、その 2 分の 1 が課税の対象とされているが、これは、一時所得が一時的・偶発的な所得であることから、超過累進税率の適用を緩和しているものである。そして、所得税法第 34 条第 1 項が「役務の対価としての性質を有する所得」を一時所得から除くこととしているのは、その所得が一時的なものであっても、役務の対価としての性質を有する限り、偶発的に発生した所得ではないからと解される。
上記 1 の (3) のロのとおり、一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得とされているところ、上記 (ハ) で述べたとおり、本件利益は給与所得に該当するから、一時所得には該当しない。

B なお、仮に、本件利益が上記 8 種類の所得以外の所得であるとした場合には、役務の対価としての性質を有するかどうかが重要となるため、次のとおり判断する。

(A) 一時所得に該当するためには、「その所得が役務の対価ではないこと」が不可欠の要件となるが、この場合における「役務の対価」とは、[1] 経済的利益の供与が具体的な役務行為に対応する場合だけではなく、一般的に人の地位又は職務に関連してなされる場合も、対価性の要件を充たすと解され、また、[2] その対価は、給付が具体的・特定的な役務行為に対応・等価の関係にある場合に限られるものではなく、給付が抽象的・一般的な役務行為に密接・関連してなされる場合をも広く含むと解される。
(B) これを本件についてみると、上記 (ハ) の C で述べたとおり、本件利益が請求人の非独立的ないし従属的な人的役務の提供の対価であることは明らかであり、また、請求人が米国マイクロソフト社に対し、直接、その役務を提供して得たものとは認められないものの、その稼得が、請求人の本件従業員等としての地位や職務を離れてはあり得ないことも明らかである。したがって、本件利益は、一時所得に該当しないと解するのが相当である。
(C) 請求人は、上記 2 の (1) のイの (ハ) のとおり主張する。しかしながら、上記 (ハ) の C で述べたとおり、本件利益は、請求人の人的役務の提供の対価としての性質を有するものであると謡められることから、一時所得には該当しない。したがって、この点に関する請求人の主張は採用できない。

(ホ) 請求人は、上記 2 の (1) のロのとおり主張する。
しかしながら、本件利益の所得区分については、所得税法に照らし、その経済的実質に着目して給与所得と判断されるものであるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。

ロ 総所得金額について

(イ) 給与所得の金額
請求人の平成 10 年分の本件利益に係る給与等の収入金額及び本件給与に係る給与等の収入金額は、それぞれ上記 1 の (4) の二及びホのとおりであるから、これらの給与等の収入金額の合計額から、所得税法第 28 条第 3 項に規定する給与所得控除額を控除して算出した請求人の同年分の給与所得の金額は、別表 2 のとおりとなる。

(ロ) 一時所得の金額
上記イの (二) で述べたとおり、本件利益は一時所得に該当しないから、請求人の平成 10 年分の一時所得の金額は、零円である。

(ハ) 総所得金額
以上の結果、請求人の平成10年分の総所得金額は別表3のとおりとなり、この金額は本件更正処分の額と同額であるから・本件更正処分は適法である。

(2) その他

原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠 苧料等によっても・これを不相当とする理由は認められない。
よって、本件審査請求には理由がないので、主文のとおり裁決する。

本書は、裁決書の謄本である。
平成 15 年 1 月 22 日
東京国税不服審判所長
首席国税審判官 小西敏美

(別表については省略)

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