税務訴訟 [Round.23 : そして審理が始まった]
 

なんじゃこりゃ (2003/6/3)

他の種類の訴訟については知らないが、今回の税務訴訟では、原告が「訴状」を裁判所に提出することで、訴訟を提起したことになる。すると、被告たる国側は、それに対して反論しなければならない。
裁判の進め方として、原告側から先に「これこれこういう理由で、更正処分は無効だから取り消せ」と先制攻撃を仕掛ける方法もあるものの、そもそも処分してきたのは国税側だから、まず国税側に釈明させておいて、それに対して原告側から反論して国税側の主張を撃破殱滅する、という戦術もある。

さしあたり、第一回の審理に先立ち、被告側から「答弁書」なるものが裁判所に提出された。それが原告側の代理人 (つまり、私が今回の訴訟を依頼している弁護士) のところに裁判所から回ってくる仕組み。そして最終的に、件の「答弁書」が拙宅に FAX で送られてきたので、中身を見てみた。

が、その「答弁書」に書いてあることは、訴訟に至るまでの事実経過が大半を占めており、肝心の処分の正当性に関する主張については「本件更正処分は適法である」と書いているだけ。「なぜ適法なのか」については、最後に

被告は、原告が米国マイクロソフト社から付与されたストック・オプションの権利行使に係る経済的利益が、一時所得に該当しないことおよび給与所得に該当することについて、追って準備書面をもって主張する

と、ほんの 3 行書いてあるだけ。なんだこりゃ。なにも "答弁" しとらんじゃないの。ウソツキ。
これは、まともに答える気がないのか、答えられないのか、ただの引き延ばし戦術なのか、さあどれだ。

ちなみに、書類の上では各地の税務署長が被告だが、実際には国税は別の「訴訟代理人」を立ててくる。今回の場合、東京法務局訴務部の「訴務官」なる肩書きの人が出てくるらしい。
今回の訴訟で国税が用意した「被告指定代理人」は、全部で 7 名。小沢正明、畑山茂樹、中村芳一、山本義弘、志村一夫、安井和彦、高野浦信昭、の各氏。(すでに提訴中の皆さん、なじみの名前はありますか ?)

これだけの頭数を擁して 4 年間の裁判を闘うと、人件費ってどれくらいかかるんだろう。うちの場合は平社員なので、役員クラスの皆さんと比べると訴訟物の価額が 1 桁か 2 桁ぐらい少ない。ひょっとすると、今回の訴訟で問題になっている金額よりも「被告指定代理人」の人件費の方が高くつくのではなかろうか。それだって、元はといえば我々の血税で賄われているんだぞ。

初審理 ! (2003/6/10)

お待たせしました。今日は最初の審理の日。といっても、答弁書の内容が「追って準備書面をもって主張する」となっているので、実のある話が出るはずもなく。

東京地裁 なにせ裁判所なんて行ったことがなかったので、まず入口の前でキョロキョロするのはお約束。それでも、「一般受付」から中に入って手荷物検査を通り、エレベーターで上の階に上がって法廷に行くことは問題なくできた。(「原告入口」ってのはないのね。需要が少ないのか)

法廷の入口に張り出されている「審理予定」を見てみたら、なんと、10 時台に同じ法廷で 4 つも審理が入っている。うちのは割当時間 20 分だが、その前の審理など、たったの 10 分間。一覧を見ると、「税務署長」が被告の裁判もあれば、「法務大臣」が被告の裁判もあって、なかなか裁判所ってのは忙しい場所なんだと実感。これから、もっと税務訴訟がいっぱい起こされて、ますます忙しくなるぞー。
(ちなみに、ひとつの審理に 20 分も割り当ててあるのは「長い部類」で、聞けば「10 分でも長い方ですよ」とのこと。てことは、たった 5 分の審理もあるってこと ? いくら民事だからとはいえ、それで何の話ができるのやら)

裁判所には少し早めに着いたので、近くの待合室で時間を潰した後、法廷に入る。TV ドラマで見るのと同じように、正面に裁判官が 3 名。原告側は左手に 3 つ並んだ椅子に座り、反対側には被告側の代理人 (訴務検事っていうんだっけ ?) が 3 人。あちらは、「いかにも」という感じのオッサンばかり。ネクタイをぶら下げていないのは自分だけで、場の雰囲気からは浮きまくる。

ちなみに、カメラ類は持ち込み禁止。持っていた場合、入口で預けておかなければならないので、法廷の写真は撮れなかった。あしからず。

最初の審理ということもあり、出てきた話題は双方の言い分の出し方や日程の話ぐらい。なにせ同様の事案が腐るほど提訴されているので、さすがに裁判所も事案の基本的なところについては承知している模様。
で、段階的に言い分を出すよりスピーディだからということで、被告側に「言い分は一度にまとめて出してください」と裁判長が提案し、被告側も了承。ただし、2 ヶ月かかるといっている。そんなに目先の違ったことをいうわけでもあるまいに、何を 2 ヶ月もかけるのやら。

そんなわけで、訴訟の対象になる金額の認否などを行う次回の審理は、9 月ということになってしまった。金額そのもので争うつもりは基本的にない (計算過程だけで争うから) にしても、気の長い話。やれやれ。

求む死守命令 (2003/8/27)

朝っぱらから分厚い封書が郵便で届けられたので何事かと思ったら、被告側が裁判所に提出した「準備書面」の写しだった。つまり、国税側の主張内容を文書にまとめて、さらに、それを援用するための資料を用意してきたわけだ。
もっとも、その「資料」たるや、内輪の文書だったり、他所の雑誌類でも国税関係者が書いた記事だったりする。第三者ならいざ知らず、内輪の文書、あるいは内輪の人間が書いたものを「資料」として援用するとは、なかなか笑える。これでは、私が何か主張する際に自著を援用するようなものではないか。まるで客観性がない。(もっとも、国税側の意に沿わない文書類を援用するはずがないのは当然のことだが)

で、援用されている資料を見ると「かくかくしかじかの理由により、地位に起因して所得区分を決めるのは正しい」とか何とか書いてあるモノが含まれていた。この被告指定代理人の人たち、私が審判所に出した文書を見とらんのかいな。そこには「署長や局長といった地位に起因して、顧問先の斡旋を組織的に受けて報酬を得ている国税 OB 税理士の事例は云々」と書いてあるのだけど。

もっと笑えたのは、準備書面の末尾に「予備的主張」という項目があって、そこで早々と「もしも給与所得でなければ雑所得であると予備的主張を行なう」と書いてしまっていること。「すべての主張をまとめて出してください」と裁判長に指示されたら、最初からこのザマだ。
これまでさんざん、虚偽の言を弄してまで「ストックオプションの権利行使益は給与所得だ」と言い張っていたくせに、いきなり「実は雑所得かもしれない」と書いてしまったのでは、「給与所得だ」という主張が弱いと自ら認めてしまったようなものではないか。雑所得だということは、すなわち給与所得ではないということだから、同じ準備書面の一方で「給与所得だ」と主張しておいて、もう一方では「給与所得じゃなくて雑所得かも」と書くのは矛盾の極み、滑稽千万。自分で自分の梯子を外してどうする。

給与所得だという主張に強力な論拠と絶対の自信があるなら、わざわざこんなことを書く必要などない。にもかかわらず、"予備的主張" などという姑息な言動で「実は雑所得かも」と書き、自ら墓穴を掘っている。こうなると、あれだけ散々「給与所得だ」と世論操作のためのプロパガンダに励んできたのは、一体なんだったのかということになる。
これを第三者が見たら、「給与所得だという主張に自信がないから、一時所得だという結論に持って行きたくないがために、逃げを打ったんだな」と考えるのが自然だろう。いかにも安全第一の官僚的な姿勢で、そもそも戦う者としての気迫が欠けている。

戦争でも、「そこの防衛ラインは見捨てるかもしれないけど、ちゃんと守っとけや」なんていわれたら、兵士の士気が下がって、勝てる戦も勝てなくなる。それと同じことをやっているのが国税の準備書面。そんなに「ストックオプション = 給与所得」だと信じているのなら、寺沢国税庁長官の名前でアドルフ・ヒトラーよろしく「死守命令」を出して、最後まで石にかじりついて初志貫徹してみたらどうなんだろう。
あ、そもそも「初志」じゃなかったねえ。最初は一時所得だったっけ (笑)

「西岡訴訟」との共通項 (2003/8/29)

鳥飼総合法律事務所のサイトで、「西岡訴訟」の判決文が公開された。一連のストックオプション税務訴訟の中でもシンボル的な意味合いを持ち、この件に関する風向きを一変させた訴訟でもあるので、ここで勝った意味は大きい。まずはおめでとうございます > 鳥飼事務所の皆様

で、その判決文を見てみたら、被告指定代理人のうち 4 名が、うちの訴訟と共通していることが分かった。つまり、小沢正明、中村芳一、志村一夫、安井和彦、の各氏。担当した訴訟が負けた途端に、また同種の案件で立ち向かってこなければいけないんだから、御苦労なことだと思う。もっとも、すでに準備書面は出ているけれど。

マイクロソフトでは、業績が上がらないと、半期に一度の業績評価でさんざんに絞られるし、ボーナスにも、ストックオプションの権利付与推薦にも (多分) 響く。法務省の訴務官の人達も、勝ったらいくらの出来高払いにしてみてはいかが。そうすれば、もう少しまともな、気迫のこもった準備書面を書いてくると思うぞ。

もしも雑所得になったら (2003/8/30)

そんなことはあり得ないと思うが、もし、最終的にストックオプションの権利行使益が「雑所得」ということになったら、果たしてどうなるか。

まず、そもそもこの件を「給与所得」にしたのは、日本で商法改正があってストックオプション制度の導入が可能になった際に、「給与所得」という扱いにしたのに揃えたことに起因する。それが、この期に及んで、訴訟の席で "予備的主張" をゴリ押しして「雑所得」ということになってしまったら、国内企業を対象にして「給与所得として扱う」という通達を出した国税の行動は、完全に意味不明なものになってしまう。

可能性としては、「海外親会社からのストックオプションは雑所得」と言い訳する可能性が考えられるが、経済的な実体に何等変わりがない以上、一方で給与所得、一方で雑所得とするのは、それこそ「公平負担の原則に反する」事態になる。「公平負担の原則に照らして給与所得」といっておきながら、他方ではそれと矛盾する行為に出るのでは、話にも何もならない。

また、1998 年頃を境に各税務署が「給与所得で納税しろ」と指導した、否、迫り始めた経緯があるが、最後の最後になって「雑所得」という結論が出たら、これらの税務署の行動も意味不明なものになってしまう。例の「一時所得」の件と違って、税務署が公式に認めている行為だから、今度は「あれは誤指導でした」という言い逃れは成り立たない。
もちろん、以前に指摘したように、過去の「申告漏れリークなどを利用した世論操作」で「ストックオプション = 給与所得」という認識を定着させようと企んだ行為も、これまた訳の分からないものになってしまう。

しかも、もし「雑所得」ということになれば、おそらく、その時点から過去 3 年分にわたってストックオプション関連の確定申告書を各税務署が洗い出し、「雑所得ということになったから追加納税しろ」と迫る可能性が高い (給与所得控除がない分、雑所得の方が給与所得よりも税額が上がる点に注意)。
そうなったら、追加納税が必要になった原因についての責は、誰が負うのだろう。これまでの国税の行動からいって、ヘタをすると追徴ついでに過少申告加算税と延滞税を賦課しかねない。税務署のいう通りに「給与所得」として申告していたら、今度は「実は雑所得だ、追徴する。過少申告加算税と延滞税も払え」となったら、もうムチャクチャだ。

自分達が「給与所得として扱え」と通達を出し、かつ、その通りに行動した結果を自分で否定してしまったのでは、もはや税務行政に対する信頼など成り立たない。我々納税者は、いったい誰のいうことを信じて確定申告書を書けばいいのか。そう考えただけでも、「実は雑所得」という予備的主張が自爆行為であると論証できるのだ。

第 2 回審理、の巻 (2003/9/2)

本日、2 回目の審理が東京地裁であった。といっても、例によって書類のやり取りがメインなので、法廷で交わされるやり取りは書面や日程の確認ぐらい。仕方ないこととはいえ、盛り上がらないこと夥しい。
おまけに、すでに民事 3 部と民事 2 部がそれぞれ「原告勝訴」の判決を出して国税を 2 タテしていること、同種の訴訟が大量に提起されて争点がすでに出揃っていること、自分の訴訟を担当していただいている代理人・補佐人の方が、すでに別の税務訴訟を先行させていること、といった事情から、改めて全部の争点についてゼロから議論し直す必要性は低く、意外と早いうちにスピード結審する可能性も考えられる情勢になってきた。

ちなみに、次回の審理は 11 月。1 回目と 2 回目の間には 3 ヶ月のインターバルが空いたが、今度は 2 ヶ月に縮んだことになる。

もっとも、国税が敗訴すれば、判決の理由とは関係なく反射的に控訴して悪あがきするのは間違いないので、結局、高裁から最高裁まで話が進むことになる。その間にどんどん訴訟が起こされて、3 桁の大台に載るのは時間の問題か。
もし、判例が確定する前に最高裁まで行けば、自分が「原告」として最高裁に乗り込めるわけで、こんな機会は、そう滅多にあることではない。ますます面白いことになってきた。ワクワク。

ところで。開廷を宣言する際に原告と被告の名前を読み上げるのだけれど、「原告、いのうえ たかし」はないだろー。原告の名前ぐらい正しく読み上げて欲しいものだ > 東京地裁の人

準備書面提出、の巻 (2003/11/10)

19 日の第三回審理に備えて、原告側の準備書面が提出された。といっても、自分で出しに行った訳ではなくて、原告側の代理人を務めていただいていてる弁護士さんから提出した、というのが正しい。

今回の場合、双方とも「一発勝負」で、主張は一挙に書面にして出すことになるので、このまま判決になだれ込むことになるのか ? 同じ民事 38 部に係属しているストックオプション税務訴訟は自分のもの以外にもあるそうなので、まとめて一挙にカタをつけることになるのかもしれない。なにしろ、提起されている訴訟の数が多いのだから。

速いぞ速いぞ、の巻 (2003/11/19)

本日、3 回目の審理があった。といっても、双方の主張をすでにまとめて出している状態なので、なんと、来年の 1/30 に判決が出るのだそうだ。3 年はかかると踏んでいたのに、なんというスピード審理 !
(といっても、被告側は負けても控訴して悪あがきするだろうから、最高裁に行くのが早まっただけ、ともいう。どうせなら、最高裁の原告席にも座ってみたい :-)

笑ってしまったのは、当初に設定された準備書面の提出期限を過ぎてから、被告側が追加の準備書面を出してきたこと。その内容ときたら「信義則違反について」と「更正処分に理由附記がない理由」に関する言い訳がメインで、こちらが主たる争点にしている点に関しては、まったく無しのつぶて。というか、言い訳しようにもできないというのが実情か。
これって、ミッドウェイでボロ負けした聯合艦隊が、アリューシャンでは勝った勝ったといってるようなものだと思う。(史実でそういっていたのかどうかは知らないけど)

今回あわてて追加してきた分も含めて、被告側が出してきた準備書面を全部積み上げると、優に 1 フィートぐらいはある。訴訟 1 件ごとに A4 用紙×1 フィート分の準備書面を裁判所と原告にそれぞれ提出して、しかもそれが肝心の争点について反論できていない空虚なもの。全部のストックオプション税務訴訟について準備書面に使った紙を合計すると、国税庁は一連の訴訟のために、いったい何ヘクタールの山林を禿山にしている計算なんだろう (そういう問題か ?)。

ともあれ、主たる争点について反論できなければ敗色濃厚だと思うが、それでも勝つ気でいるんだろうか。すでに民事 2 部と民事 3 部で三タテを食らっているのだから、よほど強力な論旨を出してこないことには、逆転は難しかろう。それとも、行政訴訟の勝ち負けって、積み上げた準備書面の高さで決まるんだっけ ? (ぉ

腹立たしいのは、訴訟が長引けば長引くほど嵩む (当局が負けたときの) 還付加算金も、元をただせば国民の血税による負担だという点。時間稼ぎの引き延ばし策を弄した挙句、結果として国民の血税を余分に使うことになったら、その責任は誰が取るんだろう ? まさか、還付加算金は訴務官の個人負担、というわけでもあるまい。
(といっても、私は「百対零主義」の信奉者だから、和解なんて論外、徹底的に膺懲する。そもそも、最初に喧嘩を売ってきたのはあっちだ)

ちなみに、うちの訴訟の前に同じ法廷で開廷していたのが、同様にストックオプション税務訴訟の案件。耳ダンボになってやり取りを聞いていたら、MS とは別の会社の方だったようだ。同じ民事 38 部に複数の訴訟が係属していると聞いていたけれど、なるほど、なるほど。


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