税務訴訟 [Round.29 : そして終章へ]
 

まずは敗戦の弁から (2005/1/25)

本日、最高裁が納税者敗訴の判決を出してしまったので、結果的に国税のワガママがまかり通ることになった。まことに残念でならない。

ただ、裁判に持ち込んだ時点で勝つ可能性もあれば負ける可能性もあったわけで、決して低いとはいえない「負ける可能性」を踏まえつつ、それでも訴訟を起こすと決めた経緯がある。だから、裁判に持ち込んだこと自体に後悔はしていない。やらずに後悔するぐらいなら、やって駄目でしたという方が、まだしもマシというものだ。
だから、誰かさんみたいに「日本の司法は腐っている」なんてことはいわない。国税については、ウソをついたり、そのウソに立脚して不当に MSKK 関係者の名誉を貶めている時点で、間違いなく腐りきっているが。

ただ、三桁になんなんとする訴訟が提起されるような事態にでもならなければ、「一時所得として指導したことなんてありません」という国税のウソがばれることはなかった。もっとも、ウソをばらすために訴訟を起こしまくったのでは、あまりにもコストが高くつき過ぎる。とはいえ、それはあくまで結果論というもの。

おそらく、国税の本音としては

「たかが納税者がぐちゃぐちゃいいやがって。悔しいけれど、ばれちまったものは仕方ない。延滞税と過少申告加算税だけはまけといてやるから、これで手打ちにしておけやボケ」
というところじゃないかと思われる。意気揚々と賦課した延滞税と過少申告加算税を取り消す羽目になっただけでも、「この世をば我が世とぞ思う」国税のメンツを潰されたわけで、我慢ならなかっただろう。
「まけてやったんだからありがたく思え」といわんばかりに送りつけてきた、延滞税と過少申告加算税の免除通知書。その中の、「天災その他の理由により」という意味不明な取消理由に、その辺の無念がにじみ出ているといったら言い過ぎか。

しかし、ストックオプションに関する確定申告を行い、延滞税と過少申告加算税をぼったくられたすべての納税者が等しくこの措置を受けたのかといえば、おそらく、そんなことはあるまい。2001 年以降の追徴分と、後は異議申立や訴訟に持ち込んだ人だけ、というのが妥当なところではなかろうか。
その一方では、給与所得としての取扱を「正常な取扱」と称し、「一時所得であると認めれば、給与所得として申告した人との間に不公平が生じる」と発言している。でも、延滞税と過少申告加算税の取扱について、特定の人にだけ免除を適用していたのだとしたら、とんだ二枚舌だ。もっとも、国税の場合は二枚舌どころか、舌が 256 枚ぐらい生えていそうではあるが。

唯一、心残りなのは、最高裁が弁論を開いてくれなかったせいで、自分が "最高裁判所の原告席" に座れなかったことだろうか。一生のうちに二度とはない、貴重な機会だと思ったのだが… (「一生に一度の貴重な機会」は、陸自でリペリングを経験しただけで十分だろ、という突っ込みはナシね :-)

もう誰も信じない (2005/1/25)

正確には「もう (国税の関係者のことは) 誰も信じない」か。

とりあえず、今回の一件を通じて得た最大の教訓は「国税のいうことは、ビタ 1 ビットたりとも信用するな」というものだろう。

なにしろ、所得区分の問題もさることながら、裁判所が「信義則」の問題について、事実上、門前払いしている点が問題だ。これによって、「国税は前言を平気で翻してよろしい」と裁判所が事実上のお墨付きを与えたようなものだ。それゆえに、今後、過去に「白」といっていたものを「黒」と言い換えるのみならず、「過去の発言否定」や「延滞税・過少申告加算税の不当な賦課横行」といった事態が、これからますます増加する可能性が高まったといえる。

これが使徒ペテロなら、3 回否認した後でおんどりが鳴くと悔い改めて泣くところだが、こと国税庁に関しては、そんなことはあるまい。いくら、役所の名前が「こっく税庁」だからといっても。あくまで、泣くのは納税者であって、国税ではない。

さらに、担当者のムシの居所によっては、国税に都合のいい内容だけ並べて「申告漏れ」としてマスコミにリークされ、それに対する名誉回復の機会すら与えられずに泣き寝入り、ということになる。これについても先例が明らかになった以上、また、同じ歴史を繰り返すに違いない。なにしろ、役所というところは前例に倣うのが大好きなところだから。

こんな役所のことを、信用しろという方が無茶な相談だ。

今回、国税と一世一代の大喧嘩を展開してみて、今まで知らなかったことをたくさん学習できた。せめて、この学習の成果を今後に活かすことが、一連のストックオプション税務訴訟を無駄にしないための道になるだろうと思う。

訴訟制度以前の自衛策を考えるべき (2005/1/25)

本件で明白なのは、国税が「一時所得として指導したことはありません」、つまり「一時所得として申告したのは納税者の勝手な判断で、それに対して給与所得課税とすることで是正した」というスタンスの情報をマスコミに流し、意図的な情報操作を目論んだということだ。
もちろん、すでに明らかにされているように、これはとんでもない虚偽であり、過去に国税当局が「一時所得で」と指導したこと、そして、突如として解釈変更を行っただけでなく、その際に過去の申告分に対する延滞税・過少申告加算税の賦課を行ったということは、すでに明らかにされている。少なくとも、この事案を法廷に持ち込まなければ、こうした国税当局の虚偽は表沙汰にならなかったに違いない。

この件に限らず、国税が「申告漏れ」と称する情報をマスコミに流す際には、その背後に何らかの意志があり、世論を都合のいい方に引っ張ろうとする狙いがあると見た方がいい。しかも、後になって責任をとらされないように、堂々と記者会見を開くのではなく、裏口からリークするという姑息な手段をとっている。なんとも御立派なことではないか。

ひとつの事案としては史上空前と思われる、三桁になんなんとする訴訟を生起した原因は、根本的には、こうした国税当局の裁量行政に対する不信がある。これだけ多数の訴訟が提起されるに至ったことで、国税が反省して態度を改めるかといえば、おそらく、そんなことはあるまい。むしろ、これに乗じて新たな解釈変更のネタを探すべく、各地の国税局や税務署では、調査部門の担当者が鵜の目鷹の目になっている、という方が真相に近いのではないか。

そうなると問題になるのは、我々納税者が、いかにしてこうしたやり方から身を護るのか、という点になる。少なくとも、

  • 処分した当人の税務署長に「異議申立」をするという無駄手続き
  • 内輪で固めた「自称・公正な第三者審査機関」である国税不服審判所への審査請求という無駄手続き
  • 国税の人間が「調査官」として派遣されている裁判所への税務訴訟提起という無駄手続き

という現行の制度に問題が大ありなのは確かだが、これは法律で規定されているものである以上、パッと変えるのは難しい。立法府である国会の代議士が法改正をいいださなければ事態は変わらないが、うっかりして財務省 (大蔵省) 出身の代議士のところにこんな話を陳情したら、鼻でせせら笑われるのがオチだ。

となれば、この手続き以前のところで、納税者が自分の身を自分で護るための抑止策を講じる必要がある。特に、フリーランサーや自営業者、SOHO ワーカーや中小企業にとっては、これはキャッシュフローの面から見て死活問題だ。

フェーズ I : 水掛け論を防ぐために

ストックオプション税務訴訟の際にも、わざわざコトを法廷に持ち込まなければ当局が認めなかったように、国税は過去に「白」だといっていたものを突如として「黒」だといい換えるケースが間々ある。しかし、過去に「白」だといっていた証拠がなければ、抗議したところで「そんな事実はない」と否定されて終わりだ。「一時所得」の一件が、そのことを証明している。

となれば、国税の関係者が何をいっていたのか、常に記録を残す必要がある。それには、以下の対策が必要だ。

  • 国税の関係者がコンタクトをとってくるときには、最初に電話をかけてくることが多い。その際に、いきなり修正申告を迫ってくる場合もあるが、まず、何事も書面で寄越すように要求する。くれぐれも、納得がいかないのであれば、最初の電話でいきなり修正申告に同意しないこと
  • 書面を郵送してきた場合、封筒、あるいは書面に、担当者の名前と所属が入っているかどうかを確認する。もしも入っていなければ、再送を要求する
  • 電話、あるいは直接口頭で行ったやりとりについても、すべて録音して記録を残しておく。その際、相手に名前を名乗らせることで、証拠能力を強化する必要がある。「名無しさん」の発言では、でっち上げ呼ばわりされかねない

余談
税務署からかかってくる電話は「発信者番号非通知」になっているようだ。少なくとも私の場合はそうだった。だからという訳ではないが、拙宅ではナンバー・ディスプレイを導入、さらに電話機の設定により、「非通知」からの電話には応答しないようにしている。ナンバー・ディスプレイを活用すれば、2 回目以降は電話が鳴った時点で税務署からの電話だと分かる。

実際のところ、国税関係者はこうした形で記録を残すのを嫌がる傾向がある。私がやり合ったケースでも、「書面で寄越せ」と要求したところ、「過去にそんなことをした前例がない」と、いかにもお役人らしい理由で渋られたが、強引に押し切って書面を出させた。口頭のやりとりで済ませても、ロクなことにはならない。
また、税務署に行くと「カメラ・録音機の持ち込み禁止」なんていう張り紙が出ていたりする。よほど、記録をとられると困る理由があるらしい。(だが、その割には「高額納税者番付」の書き写しは可能だったりするのだから、二枚舌もいいところだ)

しかし、小型の IC レコーダーを懐に忍ばせていれば、身ぐるみ剥がして身体検査でもされない限り、発見されることはあるまい。女性の方なら、IC レコーダーをブラジャーにでもくくりつけておけばよかろう :-)。また、最近では「カメラ付き携帯電話」なんていう文明の利器もある。
こういうハイテクを駆使して、どんなに些細なものでも、あらゆるやりとりに関する記録を残し、その際にどこの部門の誰による発言、あるいはやりとりなのかを明確にしておくことだ。それは、後になってもめたときに、「いった、いわない」の水掛け論を防ぐために、絶対に必要なものなのだ。

もちろん、録音をする際に「録音するぞ」と宣言する必要はない。いや、宣言するべきではない。あくまでひそやかに、それと知られない形で記録を残すことがポイントになる。

フェーズ II : 納得できないのに修正申告に応じることはない

国税の調査部門は、「修正申告の慫慂」というものをする。これは、「悪いことはいわないから、うちらのいう通りに修正申告に応じた方が身のためですよ」と脅しつける (?) 行為のことだ。

調査部門の人間にとっては、後で訴訟を起こされる道を閉ざす修正申告の方がありがたいので、できるだけ多く、修正申告の実入りを上げようとするものだ。だが、自分が納得できないのに、修正申告に応じる必然性など、金輪際ない。
だいたい、制度上は、修正申告に応じても更正処分させても、追徴額に差は生じないことになっている。違いは、後になって異議申立・審査請求・訴訟に持ち込めるかどうかだけだ。無論、更正処分されたからといって前科や犯罪歴がつくこともない。スピード違反のように、修正申告に応じないことへの罰金を取られる訳でもない。

私がしばらく前に平均課税の計算を間違えたときには、調査部門に「お土産」をくれてやるのが気に入らなかったので、修正申告の慫慂を放置プレイにした。数ヶ月後、しびれを切らして更正処分してきたのだが、どういう訳かその際に、最初にいってきていた数字よりも追徴額が 20% 以上減っていたという珍事があった。理由は不明だが、おいおい、追求してみようと思っている。
(実は、放置プレイにした期間の分だけ延滞税が増えているが、それは少額なので気にしていない。実は、不可思議に減った税額の方がはるかに多かった :-)

ただ、白色申告の場合には「推計課税」が許可されているので、場合によっては国税が一方的に追徴額を決めてしまう可能性がある。青色申告の場合、証拠なしには更正処分ができないので、そういうことは起こらない。更正処分を行うには、証拠集めの税務調査が必須となる。(更正処分を嫌がる理由の一因は、このように手間がかかることにもあるのだろう。しかし、そのための "労働の対価" として給料をもらっているのだから、ちゃんと働け :-)

そうなってくると、先の「記録を残す」というポイントが効いてくる。白色申告で推計課税を食らった場合でも、最初に修正申告を慫慂してきたときに「いくらいくら追徴しなさい」といってきた記録が残っていれば、もしも更正処分の段階でさらに追徴額が上乗せされていたら「以前と違うじゃないか」と文句をいうことができる。記録を残していないと、それができない。

フェーズ III : "追徴リスク" に備えることの重要性

日本において事業活動を行う際に、国税当局による "追徴リスク" に備えよ、というのは国際的常識らしい。なにもストックオプションの事案を引き合いに出すまでもなく、当事者の解釈や裁量によって恣意的に税額が算定され、しかもそれが、当局の都合によってコロコロ変わる事例はたくさんあるようだ。となれば、自衛策として、追徴を食らう可能性を前提にする必要がある。

エルウィン・ロンメル将軍は「もしもうまくいかなかったときに、立ち直る手段があるのはリスクで、立ち直る手段がないのは賭けだ」と発言している。税務申告と納税を「賭け」にしてしまうのは、個人でも企業でも、キャッシュフローを崩壊させる大きな危険要因になる。私の場合に、追徴リスクに備えて現金を留保できていたから個人的キャッシュフローの崩壊を免れることができたが、それをできずに悲惨な目に遭った人は数知れない。

ストックオプションの事案のように、いきなり税額が 2 倍近くに膨れ上がるのは極端だとしても、3 割・4 割の追徴は当たり前 (ビックカメラかよ) と考えて、それ×3 年分ぐらいを、追徴されることを前提にした予備資金として織り込むキャッシュフローを考えるべきだろう。
無論、その分だけ事業への投資や消費に回せる資金が減り、国の景気にも響くことになるが、背に腹は代えられない。いざ追徴を食らえば、それどころではない大打撃になるのだから。現に、ストックオプションの一件では国税が背中から刺すような真似をしたせいで、予定外の出費を抱え込んで借金したり、破産状態になってしまったりした人までいる。

フェーズ IV : 国税 OB 税理士をボイコットしよう

よく知られているように、税理士を大別すると「ちゃんと試験を受けて資格を得た税理士」と、「国税庁に一定年限にわたって勤務することで、無試験で資格を得た OB 税理士」の 2 種類がある。

もし、国税とやり合い、訴訟にまで持ち込もうという場合には、法律面でのバックアップが必須だが、現実問題として税法実務に詳しい弁護士はそれほど多くないようだ。となると、最近になって実現した補佐人制度により、訴訟に際して税理士を補佐人につけることが重要になってくる。私もそうした。

しかし、その補佐人が国税 OB 税理士だったらどうなるだろう ? もちろん、「依頼人の利益が何者にも優先する」というのは筋論だが、果たして国税 OB 税理士が、国税に立ち向かおうという訴訟に対して、どれだけ本気で取り組んでくれるのかどうか。むしろ、「やっても無駄だから、修正申告に応じた方がいいですよ」などといわれかねない。

そう考えると、私はあえて、この場で「国税 OB 税理士のボイコット」を提案したい。納税者のために働いているのか、国税のために働いているのか分からない国税 OB 税理士 (しかも、ちゃんと試験を受けていなかったりするのだ) などアテにしないで、本当に納税者のために働いてくれる税理士を捜そうではないか。

国税庁の Web サイトに掲載されている内容によると、税法免除で 10-15 年、会計学の免除で 23 年の勤務が必要になる。ということは、税法と会計学の両方が免除されるのは早くて 23 年後だから、高卒で就職したとしても、41-42 歳程度にはなっているはずだ。いいかえれば、これより若い税理士なら、試験組の可能性が高くなる。年齢だけですべてを判断する訳にはいかないが、少なくとも OB 税理士ではない確率という点についていえば、若手の方が確実性が高い。

フェーズ V : 怪しいと思ったことには応じない

ストックオプションの一件で異議申立を行った際、それを却下する通知を持って、国税の人間が拙宅にやってきた。インターホン越しに「通知の受け取りをもらいたい」と話していたのだが、更正処分の通知ですらポストにいきなり突っ込んだ国税が、たかが異議申立の却下ぐらいで「受け取り」を欲しがるのは、どう見てもおかしい。

そこで私は「手が離せないからポストに突っ込んでおいてくれ」といって応対せず、「受け取り」とやらに応じなかった。後で知人の税理士に確認したところ、「受け取りを求めるなんて聞いたことがない。その対応は正解です」といわれたものだ。

今でも真相は不明だが、私はこれを、国税に都合のいい書類、たとえば審査請求や訴訟を行わないという念書のようなものに、「受け取り」と称してサインさせようとしたのではないかと疑っている。もちろん、私の猜疑心が強すぎるだけかもしれないが、すでに国税当局に対する信頼感はゼロを通り越してマイナスになっているので、あらゆる挙動を疑ってかかるのは当然。

これはいささか極端な事例だとしても、国税の人間が何かアクションを起こした場合には、いちいち立ち止まって疑ってかかるぐらいで、ちょうどいいのではないかと思う。後になって寝首をかかれないという保証はないのだから。右手で握手しながら、左手をこっそり背中に回して、ナイフで心臓を刺すような真似をするのが国税庁だ。

フェーズ VI : 官庁本もボイコットして、通達の有無を確認しよう

ストックオプション税務訴訟の中で、過去にリリースされていた官庁本、すなわち「所得税確定申告の手引き」とか「質疑応答集」の中で、一時所得として申告するよう記述されていた件を原告側が突っ込んだところ、国税は「あれは書いた人間の個人的見解で、公式見解ではない」と答えたらしい。
しかし、財務省の天下り団体 (?) が出している書籍の中で、国税の人間が職名付きで書いている記事が「個人的見解」とは笑わせてくれる。個人的見解なら、市中の出版社から個人名で出せよと。

武蔵府中税務署の佐藤広氏 [2000 年 11 月当時] が発言しているように、こうした官庁本は税務署の人間も仕事の参考にしているはずのものだが、それが「個人的見解」で「公式見解ではない」のであれば、つまり、税務申告の役には立たないものを、毎年、高い値段で売りつけて儲けていることになる。こういうのを、社会一般には詐欺という。

となれば、当局御自ら "公式見解ではない" と称しているものに、わざわざ高いカネを払う必要はない。税務署の人間が何らかの解釈を示して "指導" してきたときには、必ず、それに関する通達が出ているかどうかを確認しなければなるまい。そして、根拠となる通達が出ていないのであれば、そんなものに応じて修正申告したりしないのが賢明というもの。その上で、根拠となる通達を出すように求めてみるべきだ。
なにしろ、通達が出ていない "個人的見解" に基づいて所得申告した日には、3 年後に調査に入られて、本税・延滞税・過少申告加算税の三連コンボを食らうかもしれないのだから。

もっとも、通達とて、気が変わったら出し直せばコロコロと内容を変えられてしまうという点では始末が悪いが、それでも "個人的見解だ" といわれない分だけマシだ。

忘れられそうな二枚舌の話 (2005/1/26)

「二枚舌」の話で、書き忘れていたことがひとつあった。

この件が問題になっているのは、役員とか社員とかいう立場の違いはあるにしても、いずれも会社勤めの給与所得者。年収 2,000 万円を超えている場合は別として、会社員が確定申告を行なうのは、住宅ローン減税か医療費控除を使った、いわゆる還付申告に限られることがほとんどだ。だから、所得税の確定申告、所得区分の違い、給与所得控除の意味と計算方法など、分かっていそうで分かっていない人が多いハズだ。

しかし、それがいざ、ストックオプションの権利行使その他の事由で所得税の確定申告をする羽目になると、武蔵府中税務署の佐藤広氏 [2000 年 11 月当時] がいみじくも口にしたように、

知らなかったというのは理由にならない

といって、都合のいい理屈を押し付けるわけだ。たとえ、それが自分達の都合による闇討ちの解釈変更であったとしても。超能力で解釈変更を予知しろとでもいうのか。それとも、これは国税 OB 税理士に仕事を回すための陰謀か。

平素から確定申告をしていた人ならいざ知らず、通常は確定申告に縁のない人に向かって、この台詞はないだろう。しかも、給与所得者に源泉徴収制度を強いてきているのは、当の国税だ。この制度に対する国税のこだわりも、また並々ならぬものがあるのは、よく知られている通り。
平素は、会社員の確定申告をできるだけ避ける方向に持って行っておきながら、いざ確定申告するとなると

知らなかったというのは理由にならない

知らなかったというのは理由にならない

知らなかったというのは理由にならない

知らなかったというのは理由にならない

知らなかったというのは理由にならない

知らなかったというのは理由にならない

知らなかったというのは理由にならない

知らなかったというのは理由にならない

だなんて、そんなのありか。

ついでに書けば、権利行使益が「給与所得」だと強弁する割には、その権利行使益に対する所得税の源泉徴収が行われていないという事実に目をつぶっているし、労働基準局長通達の一件、あるいは社会保険料の計算がストックオプションの権利行使益抜きで行われているという矛盾についても然り。
(もっとも、社会保険料の件についても、例によって例のごとく「立法趣旨が違う」の一言で片付けるであろうことは、容易に想像がつく)

しつこいけれども、こんな二枚舌に平然としている役所のことを、一体全体、どうやって信用しろというのか。

ぶっちゃけ、ホトボリが冷めたころに今度は「社員に権利付与した場合と、社員ではない外部の人間に権利を付与した場合の扱いの不公正を統一するために、今後は雑所得で統一する」(注 : 現在、社員ではない人に権利付与した場合、権利行使益は雑所得。給与所得控除がない分だけ、雑所得の方が税額が高くなる) といって、またぞろ過去に 3 年分遡及して追徴するかもしれないじゃないか。もちろん、本税・延滞税・過少申告加算税の三連コンボで。
今回の一件で、裁判所が「信義則」を門前払いしたことは、今後、さまざまな方面で害毒を流す結果になると思われる。実は、これが最大の問題点といえる。


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